モル濃度計算
分子量、溶質の質量、溶液の体積から、モル濃度(mol/L)を計算できます。
モル濃度計算
計算結果
-- mol/L
計算式:
モル濃度について
モル濃度とは
モル濃度は、1リットルの溶液中に含まれる溶質のモル数を表します。
- 単位:mol/L(モル毎リットル)
- 記号:M(モーラー)
- SI単位:mol/m³
計算例
例えば、分子量58.44 g/molの塩化ナトリウムを5.844 g使用し、1 Lの溶液を作る場合:
モル数 = 5.844 g ÷ 58.44 g/mol = 0.1 mol
モル濃度 = 0.1 mol ÷ 1 L = 0.1 mol/L
計算時の注意点
- 単位を正しく確認してください(g, g/mol, L)
- 分子量は物質によって異なります
- 溶質が完全に溶解していることを確認してください
- 計算結果は小数点第3位まで表示されます
単位変換ガイド
実験室では、様々な単位で測定することがあります。以下の変換が役立ちます:
体積の変換
- 1 L = 1000 mL(ミリリットル)
- 1 mL = 0.001 L(リットル)
- 1 L = 1 dm³(立方デシメートル)
- 1 mL = 1 cm³(立方センチメートル)
質量の変換
- 1 g = 1000 mg(ミリグラム)
- 1 kg = 1000 g(グラム)
- 1 mg = 0.001 g(グラム)
よくあるエラーと解決策
一般的な問題
- 桁違いの結果:単位の混同(例:mLとLを混同)が原因の可能性があります
- 予想外の結果:分子量の値を確認してください(水和物や塩の形態に注意)
- 溶解度の限界:高濃度では溶質が完全に溶解しない場合があります
精度向上のヒント
- 校正済み器具:校正されたピペットやメスフラスコを使用する
- 正確な秤量:分析天秤を使用して溶質を正確に秤量する
- 温度管理:溶解度や体積は温度によって変化します
- 純度の考慮:試薬の純度が100%未満の場合は補正が必要です
モル濃度計算の実用例
化学実験室での計算例
例1: 0.1M 塩酸溶液の調製
塩酸(HCl)の濃厚溶液(37%、密度1.19 g/mL)から0.1 mol/Lの溶液を1L作る方法:
1. HClの分子量: 36.46 g/mol
2. 濃厚溶液中のHCl含有量: 37% = 0.37 g/mL × 1.19 g/mL = 0.44 g/mL
3. 必要なHClのモル数: 0.1 mol
4. 必要なHClの質量: 0.1 mol × 36.46 g/mol = 3.646 g
5. 必要な濃厚溶液の体積: 3.646 g ÷ 0.44 g/mL = 8.29 mL
結論: 約8.3 mLの濃厚HCl溶液を水で希釈して1Lにする
例2: 緩衝液の調製
0.1M酢酸ナトリウム/酢酸緩衝液(pH 4.8)の調製方法:
1. 酢酸ナトリウム(CH₃COONa)の分子量: 82.03 g/mol
2. 酢酸(CH₃COOH)の分子量: 60.05 g/mol
3. Henderson-Hasselbalchの式: pH = pKa + log([塩基]/[酸])
4. 酢酸のpKa = 4.76
5. 4.8 = 4.76 + log([CH₃COONa]/[CH₃COOH])
6. [CH₃COONa]/[CH₃COOH] = 1.10
結論: 0.1M溶液を作るには、0.052Mの酢酸と0.048Mの酢酸ナトリウムを混合する
医療・薬学分野での応用
例1: 医薬品の用量計算
薬剤のモル濃度から適切な投与量を計算する例:
1. 抗生物質(分子量: 450 g/mol)の治療濃度: 0.002 mol/L(血漿中)
2. 患者の血漿量: 約3L
3. 必要な薬剤のモル数: 0.002 mol/L × 3L = 0.006 mol
4. 必要な薬剤量: 0.006 mol × 450 g/mol = 2.7 g
結論: 治療濃度を達成するには2.7gの薬剤が必要(実際には生体利用率や排出速度も考慮)
例2: 輸液の電解質濃度
生理食塩水(0.9% NaCl)のモル濃度計算:
1. NaClの質量濃度: 0.9 g/100 mL = 9 g/L
2. NaClの分子量: 58.44 g/mol
3. モル濃度計算: 9 g/L ÷ 58.44 g/mol = 0.154 mol/L
4. Na⁺とCl⁻のイオン濃度: 各0.154 mol/L
生理学的意義: この濃度は血漿中の電解質濃度に近く、細胞の浸透圧バランスを維持する
工業プロセスでの応用
例1: 水質検査と処理
水処理施設での塩素消毒と硬水軟化処理:
1. 塩素消毒:有効塩素濃度を0.5-1 ppm(約0.000007-0.000014 mol/L)に維持
2. 硬水の軟化:1000m³の水に含まれるCa²⁺(0.001 mol/L)を除去する場合
3. 必要なEDTA(分子量: 292.2 g/mol)の量: 0.001 mol/L × 1000m³ × 1000L/m³ × 292.2 g/mol = 292.2 kg
工業的重要性: 正確なモル濃度計算は大規模処理での化学薬品の最適使用につながる
例2: 電気めっきプロセス
銅めっき浴液の調製と管理:
1. 標準的な硫酸銅めっき浴:CuSO₄の濃度 0.2-0.3 mol/L
2. 100Lのめっき浴を調製する場合(0.25 mol/L):
3. CuSO₄・5H₂O(分子量: 249.7 g/mol)の必要量: 0.25 mol/L × 100L × 249.7 g/mol = 6.24 kg
4. めっき中のCu²⁺濃度監視: 濃度が0.2 mol/L未満になると補充が必要
品質管理: モル濃度を一定に保つことで均一なめっき厚みと品質を維持できる
よくある質問(FAQ)
質量パーセント濃度は溶液中の溶質の質量比(重量比)を表します。例えば、10%の塩化ナトリウム溶液は、100gの溶液中に10gの塩化ナトリウムが含まれていることを意味します。
モル濃度は1リットルの溶液中に含まれる溶質のモル数を表します。化学反応は物質のモル比で進行するため、反応計算には質量パーセント濃度よりもモル濃度の方が直接的に使用できます。例えば、1 mol/Lの塩化ナトリウム溶液は、1Lの溶液中に1モル(58.44g)の塩化ナトリウムが含まれています。
モル濃度(mol/L)からppm(mg/L)への変換は以下の式で行います:
ppm = モル濃度 × 分子量 × 1000
例えば、0.001 mol/Lの塩化ナトリウム(NaCl、分子量58.44 g/mol)溶液の場合:
ppm = 0.001 mol/L × 58.44 g/mol × 1000 = 58.44 mg/L = 58.44 ppm
化合物の分子量は以下の方法で調べることができます:
- 化学式からの計算:各元素の原子量を調べ、その合計を計算します
- オンラインデータベース:PubChem、ChemSpider、WebBookなどのデータベースで検索
- 化学辞典や参考書:化学辞典などの参考文献で調べる
例えば、H₂Oの分子量は、水素(H)の原子量(1.008)×2 + 酸素(O)の原子量(16.00) = 18.016 g/molとなります。
希釈計算には以下の公式を使用します:
C₁V₁ = C₂V₂
ここで:
- C₁:元の溶液のモル濃度
- V₁:元の溶液の体積
- C₂:希釈後の溶液のモル濃度
- V₂:希釈後の溶液の体積
例えば、0.5 mol/Lの溶液から0.1 mol/Lの溶液を100 mL作る場合:
0.5 mol/L × V₁ = 0.1 mol/L × 100 mL
V₁ = 0.1 mol/L × 100 mL ÷ 0.5 mol/L = 20 mL
つまり、0.5 mol/Lの溶液20 mLを水で希釈して全体を100 mLにします。
参考資料とリソース
参考文献
- 日本化学会編「化学便覧 基礎編II」丸善
- P.W. Atkins, J. De Paula「アトキンス物理化学(上)第10版」東京化学同人
- D.C. Harris「定量分析化学」丸善
- 日本薬学会編「第十七改正日本薬局方解説書」廣川書店
関連リンク
- NIST: SI Units - 国際単位系に関する情報
- PubChem - 化学物質データベース(分子量検索に便利)
- ChemSpider - 化学構造データベース
- NIST Chemistry WebBook - 化学物質の物理化学データ
より正確な計算のために
正確なモル濃度計算には、高純度の試薬、校正済みの測定器具、適切な温度管理が重要です。これらの要素が実験結果の精度と再現性に直接影響します。疑問点があれば、専門家に相談するか、化学分析の標準的な参考文献を参照することをお勧めします。